「高校の市民教育が、香港を過激化させていると中国政府が批判」(英語。学生たちの写真あり。New York Times, 9月1日)。The High School Course Beijing Accuses of Radicalizing Hong Kong
大学院の同級生に香港人さん(現在、オーストラリアで大学教授)がいることもあって、ずっと香港の状況を追いかけています。香港で逮捕された人を中国本土に移送することを許す「身柄引き渡し法」をめぐって始まった抗議活動ですが、9月になって学校が始まり、中学、高校、大学で授業ボイコットが起こっています(そして、中学生が校内で警察の暴行を受ける事件も)。この「身柄引き渡し法」が施行されれば、中国政府にとって都合の悪い香港の言論を抑えつけることができるようになるため、徹底的な抗議が続いています。
そんななか、ニューヨーク・タイムズが上記の記事を出しました。香港では、民主主義と市民のあり方について教える授業(天安門事件等についても教える)が必須になっているのだそうですが、中国政府からはこれが今回の「過激化」の原因だと非難されているとのこと(この授業は英国統治下の1992年に始まり、2009年に必修化)。中国政府は香港の教師たちに対し、「難しい質問」をされたら「知らない」または「私にもわからない」と答えるよう指示しているそうです。もちろん、中国の「愛国教育」を香港に導入しようという動きも続いていますが、まだ実現していません。香港最大の教員組合は、学生の平和的抗議行動を支持、この授業が過激化だという批判を事実無根と退けています(学生たちも)。
香港の話はよそごとかもしれませんが、日本でも(時間的な理由から?)現代史を教えないのが「普通」になっている状況を考えると、先々が心配になります。教育は人間を決める基本ですから。オーストラリアやカナダなどでは、中国(本土)出身者が香港人に暴力をふるう時間が多発しています。「なにそれ?」と言うのは簡単ですが、中国本土ではfacebookもtwitterも見られず、一方、中国政府は無数のfacebookやtwitterの偽アカウントを通じて(国外の)中国人に対し、香港をめぐる嘘を流し続けました(facebookもtwitterもこうした偽アカウントをかなり削除しましたが)。国外にいても、中国人は本土から監視され、なにかあれば「中国国内にいる家族に危害が及ぶぞ」という脅迫すら受けます(迫害されている新疆ウイグル自治区の人たちの経験から明らか)。教育は人をつくるものですし、特に、偽ニュースと真実の境目がわからなくなっている今、日本でも同様のことが起こる危険性は考えておいたほうがよいかと思います。
「監視」については、中国が来年までに実装すると言っている「社会信用システム Social Credit System」(ウィキペディア、日本語)も見逃すことができません。このシステムは、ごみ捨て行動から収入から、中国政府が出すニュースを何回拡散したかから、何から何まで市民一人ひとりの行動を点数化し、「良い市民」には特典を与え、「悪い市民」からはさまざまな権利を剥奪するというものです。ちなみに、中国は写真や動画から個人を特定する技術がもっとも進んでいます。それと合わせることで、このシステムで社会を管理しようとしているわけです。
明日は我が身、と考えたほうがよいように思います。